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ノタリスを求めて

以下、土地を購入する契約手続きをノタリス(公証人のような人)にやってもらうために、右往左往した経緯を、そのまま時系列で記録しておく。慣れないことは、こんなに手間がかかるものだ。

2/22AM F.H氏との会話 クタの事務所で

F.H氏は、旅行ガイド会社の社長である。まだ30前後の遣り手華僑という感じ。奥さんは福岡出身の日本人。福岡の航空会社のK氏から紹介された。
マデとチャハヤデワタ・ホテルの息子ダルタとを連れてクタの事務所に彼を訪ね、土地の購入手続きについてアドバイスをもらった。

F : 家を建てると聞きました。ノタリスに頼んで、土地を担保にお金を貸したことの書類を作ってもらえばよいです。
私 : 日本語か英語のわかるノタリスはいますか?
F : いません。少しできる人を紹介します。
私 : ぜひお願いしたい。
(F氏が、ノタリスのS氏に電話)
F : Sさんはウブドゥのことはできない。しかし、必要ならギアニャールのノタリスを紹介するといいました。
(ペネスタナンの属するウブドゥ郡はギアニャール県の中にある。)
私 : Sさんにお礼はいりますか?
F : いりません。ギアニャールのノタリスさんにはいります。
私 : どうも、ありがとう。
(この後、奥さんのこと、チャハヤデワタはよいホテルだが、プランニングがないのが残念だ、といったような雑談)

2/22AM マデとの会話 車の中で

私 : これから、Sさんのオフィスに行って、ギアニャールのノタリスを紹介してもらう。
マ : それなら、チャハヤデワタ・ホテルの社長さんに紹介してもらった方が、お金かからないです。道も近いです。
私 : ‥‥‥。それじゃ、そうしよう。

2/22PM チャハヤデワタの社長ムヌット氏との会話 ホテルで

ム : 何も問題ない。明朝ホテルにくるように連絡しておく。
私 : オフィスでなくホテルでも手続きの書類を作ってもらえるのか?
ム : もちろん。
(雰囲気的には、それが例えば、ちょっとした鼻風邪のために大学病院の院長を自宅に呼びつけるようなものだ、ということは後でわかった。ノタリスは、かなり威厳のある職業で、かつノタリス事務所には大勢が詰めかけて手続きしてもらう順番を待っている)

2/23AM マデとの会話 ホテルで

私 : お早う。
マ : お早うございます。行きましょう。
私 : どこへ?
マ : ギアニャールのノタリスさんのところへ。
私 : きのう、ノタリスさんをここへ呼ぶと決めたではないか!
マ : いいえ。マンクさん(土地所有者)を連れてギアニャールのオフィスに行きます。お金のことと土地のことが一回で済みます。
私 : ‥‥‥‥‥‥‥‥
(ノタリスを交えて行うべき手続きが2つある。ひとつは、土地を担保に金銭の貸借をした旨の当方とマデとの契約。もうひとつは、地主であるマンクから名義人マデへの土地の所有権の移転手続き。でも、そんなことは昨日からわかっていた)

2/23AM マンク氏との会話 ペネスタナンのマンク氏宅で

マ : 私の身分証明書を村長のところへ取りに行かせたので、ちょっと待ってほしい。
(契約には、身分証明書が必要とのこと。約30分程雑談をしながら待っていると)
マ : 村長がどっかへ行っていて、いない。従って、身分証明書がない。それで、私は明日行くことにする。本当に申し訳ない。
私 : どういたしまして。
(隣のサヤン村には村のカントール(役場)があるが、ペネスタナンにはない。村長は自分の家をオフィスにして仕事をしている、らしい。)

2/23AM ノタリス事務所の美人事務員との会話 ノタリス事務所で

マデとダルタを連れて、ギアニャールのノタリス事務所を訪ねた。長椅子が置いてあって、何人かが手続きを待っている。

美 : パスポートは?
私 : え? いるの? 持ってこなかった。
美 : それでは今から昼休みなので、今日はこれでおわり。明朝に書類の案を作っておく。明日パスポートを持って、また来ること。

2/24AM 再び例の美人事務員との会話 ノタリス事務所で

今度は、マデとマンク氏を連れて、再びノタリス事務所を訪ねた。いよいよ実際に契約書を作ってもらえそうだ。

美 : あなたの職業は何ですか?
私 : A-HOUSE-IN-BALI代表としてほしい。
美 : それは職業ではない。
私 : それでは都市計画家としてほしい。
(この後、「都市計画家」をインドネシア語の辞書を引きながら30分位説明したが、とうとうわかってもらえなかった)
私 : それじゃあ、ARSITEK(建築家)でいいです。

2/24PM ノタリスさんとの会話 ノタリス事務所で

やっと手続き完了。できあがった書類を持って、美人事務員が先頭に立ち、我々を奥のノタリスのところに案内した。
ノタリスは、眼鏡をかけた、太ってはいないが恰幅のある、堂々とした女性スカルミニ女史である。年の頃は50歳前か? 奥の少し暗い個室に陣取っていて、事務員が処理した案件の最終段階に登場してサインを行う、らしい。

ス : どこから来ましたか?
私 : 日本からです。
ス : 何も心配はいりません。サインすればよろしい。写真を撮りますか?
私 : よろしければ。
ス : もちろん。
(ここまで辿り着くのは大変だったが、最後は何もなかったように、極めて友好的かつなごやかな雰囲気の中で調印が終了した)

総括

ノタリス事務所に来て、契約の必要を説明し、契約書を作成してサインさせてもらうまでには、ホテルと事務所を都合4回往復し、丸々3日の日数を費やしたことになる。
この間の紆余曲折は、あまりに煩瑣でこれ以上の報告には及ばないが、そのじれったさには筆舌に尽くしがたいものがあった。しかし、そのおかげで私のバリへの親和力は確実にワンステップ向上した、と思う。
悠々たるバリ時間に面食らって右往左往しているうちに、諦めて自省してみると、別に契約を急ぐ理由など何もないのである。なんだ、あくせくすることはないんだ。
このキラキラ(適当適当)とかティダ・アパアパ(気にしない気にしない)とか表現される感覚は、バリの時間だけでなく、生活の隅々にまで行き渡っている。どうせ慣らされるものであれば、早い機会に強制的に体感できたのは、どちらかといえば幸運であった。

しかし,写真を撮影して帰りがけにノタリス氏が「何だったら契約書を日本語に翻訳してあげてもよい」と言ったときには、思わずむっとして「それには及ばない」と切り返してしまった。そんなことを頼んだらいつになるかわからない。
私の親和力はまだ発展途上であった、と思う。

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