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オープニング

とりあえず竣工

建築に着工した8月1日に、竣工予定を確かめた。建設マネージャのラーマは
「遅くても10月一杯で完成する」
私「それでは12月末にオープニングパーティーをしよう」
私は既にバリの時間感覚を熟知していたのである。隣の僧侶マンク氏に相談して12月28日をその日と決めた。
パーティーの数日前の夜、日本から16人のメンバーを連れて駆けつけた。
建物はいくつかの未完成部分を残しながらも、その数時間前にやっと滑り込みセーフで、とりあえず竣工していた。

真っ暗なカティランタンの集落を抜けると、広いライステラスの向こうに、館の灯りが浮かび上がって見えてくる。ホタルのようだ。

近づくと何やら騒がしい。家具や備品の据え付け、掃除、食器やリネンの整理などのために、ラーマの奥さんが20人の作業員を相手に大立ち回りをやっていた。掃除の後を片端から汚すといって追いかけては叱りつけている。戦争である。

ウパチャラ

さて、戦争も終わって静かなパーティー当日の朝、全員でヒンドゥーの正装を着用して庭でウパチャラ(儀式)に臨む。

地鎮祭を行ったカヤ畑の同じ場所が、今や小さいながら噴水池がふたつも配置された瀟洒な芝生の庭になっている。
その後夕刻から夜半にかけて、盛大なお祭りが挙行された。やってきたのは、地元のガムラン楽団、一人舞踏トペンを踊る翁、他の村から呼んだジョゲブンブンの楽団と踊り子たち。それから、低い塀に鈴なりになってそれを見物する村の人々。

門の前では、人だかりができて何やらサイコロを使った賭博が開帳されている。表に出ると、小さな屋台まで来ている。村にとって、恰好のレクリエーションの機会となったようだ。

「アピアピ」の命名

祭りの後。私たち一行は、濃密な気の充満した熱帯の夜のしじまの中で、部屋の命名に遊んで夜更かしをした。片方の客間は語感がかわいいから「クプクプ(蝶)」、それじゃもう一方の客間は「チャプン(とんぼ)」、予備の寝室はトケ(ヤモリの一種)が住みついているから「トケ」、テラスは全体を支えているから「クラクラ(亀)」、見晴らし部屋は空に近いので「ブラン(月)」。

家全体の屋号「アピアピ」もこの時に決めた。「アピアピ」とは、ホタルのことである。
騒がしさと静寂が交互に巡る波の中から、アピアピはその歩みを開始した~~というわけである。

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