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現場の人たち

チームの構成

現場には、信じられないくらい大勢の人たちが働いていた。最盛期に数えたら、敷地内に25人。よく見ていると、いくつかのチームに分かれているのがだんだんわかってきた。
大きく分けると、専門職人チームと人夫チーム。専門職人チームはさらに、どこからきたかで、プジュンチーム、サボチーム、ジャワチームに分かれている。専門職人の日当はRP9~10千/日。人夫の日当はRP5~6千/日。

専門職人のチーム

プジュンチームがだいたい中心になっていて、大工、建具、左官などをやっている。プジュンは、ウブドゥの近くの村である。大工の一人は、私の滞在中ずっと螺旋階段のホゾ切りをやっていた。もう一人の大工は、付属屋の屋根に上がって竹の垂木と尾羽根の細工をしていた。
大工仕事の殆どは、鋸と手斧と2~3本のノミでやってしまう。金槌やカンナは使わない。器用なものだ。仕上りの精度は高くないが、どことなく力がある。

建具師は、飾り縁の削り出しをやっていた。こちらはずっと鋸とカンナだけ。
左官は、若くてかわいい女の子2人組みと同年代の青年。3人の関係はよくわからない。女の子たちは、内壁のモルタル上塗りと刷毛仕上げを仲よくやっていた。青年は、もっぱらブロック係で、壁のブロック積みと屋外のサンガの階段づくり。

それから、いってみれば鳶仕事の連中も2~3人いる。高置水槽の上にとまって、型枠はずしをやっていた。私も上がってみたが、目がくらむような場所であった。

サボチームは、全員が屋根屋さん。腰に竹の皮の紐をぶら下げて、大勢で茅を葺いていた。

ジャワチームは、1人だけ電気屋さんで、残りは6~7人の井戸掘りグループ。まだ少年の面影を残す電気屋さんは、井戸掘りグループとは所属が違うらしい。いわゆるニューハーフであることがその物腰ですぐわかる。人夫のおばちゃんたちと、その種のネタで冗談をいい交わしては、ゲラゲラ笑いあっている。井戸掘りグループは渡り鳥で、今もこの現場に全員で寝泊まりしているとのこと。

人夫のチーム

さて、人夫チームはというと、女性7~8人に男性が2人、全員がペネスタナンの人たちである。この人たちの仕事は、穴掘り、モルタルこね、資材運搬が主なものである。

中に一際美人の女性がいた。年は20歳前後、ちょっと着替えてくればすぐにファッション雑誌の表紙にでも使えそうな、端正な顔立ちに端麗な容姿。この人が、鍬とスコップをもって裸足で壁の基礎の穴を掘り、砂や石を頭に載せて運んでいた。もったいない。当地では日本人の美的基準とだいぶ違うのかも知れない。現にマデに「あの娘さんは随分美人だねえ」と耳打ちしたら,「どこが?」と言われた。

モルタルや生コンクリートも、すべてバケツやブリキのプレートに入れて、頭で運ぶ。これは、もっぱらあのマデの妹がはりきっていた。
モルタルをこねるのは、砂をふるいにかけるところから、できたモルタルを運ぶところまで、きちんと役割分担がされて、極めて円滑な流れ作業で行われている。従って、水を入れてこねる人は、一日中それをやっている。あの荘厳な手付きでいけにえのヒナの頭をはねたマデのおばさんは、一日中ふるいを揺すっていた。

すべてが人力

現場には、機械というものがない。日本の現場で見るような、小型ミキサーとか、運搬車とか、電動円鋸などの電動工具とか、昇降機とか、そういうものが一切ない。一輪車に替わるものさえない。すべて人力、といっても過言ではない。そのかわり、人が多い。人はうようよいるが、電源コードやコンプレッサのホースがもつれながらのたうちまわっているという状況はない。その分、現場に活気と温もりがあり、整然として家づくりが進められている、という感じの伝わってくることが印象的である。

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