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バリ人の仕事ぶり

橋の工事

タンパクシリンに行く途中で、橋の高欄の工事をしているのに出会った。長さ数mばかりの橋に何人もの男女がまとわりついて、モルタルをこねたり、赤煉瓦をはつったり、論評したり、考え込んだりしている、風であった。
ああ、バリの風景だ。
前に、わずか10m程の長さの塀を作っている現場を観察したことがあったが、やはり10人もの人間がそれにかかって、悠然と作業をやっていた。糸を張るにも、寸法を出すにも、煉瓦を割るにも、緩慢につけたりはずしたり、遠目近目に眺めつつ、煉瓦が一個一個積み上がっていく。10人いるからといって、殆ど1人分の仕事しかはかどっていない。
彼ら彼女らは、常に熟思黙考の態で仕事をする。
赤煉瓦の貼り方はこうだ。まず、水をつけて煉瓦同士を擦り合わせて、6面全部を平にした後、既に積みおわった段の上にすりつけて手を離す。そうすると、水に溶けた粘土の粒子が煉瓦の間隙に残り、それが乾いてくっつくのである(というふうに私は理解している)。手を離す前に、タバコに火をつけて一服しながら、煉瓦の積み具合をためつすがめつ確認することがポイントである。
これで仕事のはかどるわけがないではないか。ただし、盲目地の頗る美しい壁面が出来上がる。その赤い壁面には、時にレリーフが施されて、それがまたよく映える。
彼ら彼女らの頭の中には、どうしたらかっこいい高欄や塀ができるか、それしかないようだ。もう少し効率よくやったら? と忠告したいところだが

「よけいなお世話だ」

といわれるに決っている。

「あんたらに言われる筋合いは、ない」

発注者や設計者は、さぞかしいらいらしているに違いない。
そうでもないのかしら?

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