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バリの悪人たち

盗賊団

夜半から、ウブドゥ周辺の真っ暗な路上に、ここに3人、ここに5人と、凛々しい男どもがたむろしたり、隊列を組んで歩いたりしている。いずれも、棍棒のようなものや、長い竿を持っている。竿の先には、時々キラリと光るものがある。つまり、これは槍である。
どうもただごとではない、おどろおどろしさが闇の中に充満している。お葬式のシーズンなので、そのせいかとも思ったが、そうではなかった。

「どうしたの?」
「ジャワから盗賊団がやってきていて、夜な夜なあちこちの寺で盗みを働いている。これは、その警備である。私たちは今夜の当番」

いわゆる、自警団である。これでは、泥棒も命懸けだ。

後で聞いたところによると、泥棒なんかは警察が来る前に殺してしまうんだそうだ。なぜなら、警察が来た後では殺せないから。つまり、お巡りさんは悪者を捕まえに来るのではなくて、捕まった泥棒に法の保護を与えに来るわけだ。だから、犯罪者は捕まりそうになると必死で警察に駆け込むという。少し眉唾な部分もあるが、ともかくバリで悪いことをしてはいけない。

これも後で聞いたところでは、ジャワから来た盗賊団は、ヒンドゥの寺にもぐり込んで、宝物を奪うだけでなく、その後にけしからぬ落書きを残したり、現地の人の言葉によると「頭にウンチをする」ような行いを繰り返していて、それが人々の怒りに油を注いでいるらしい。窃盗だけならいざしらず、わざわざ宗教的挑発までからませているということだから、これでは槍で突かれてもしかたがない、のだそうだ。

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