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カープ優勝

2016年9月11日中国新聞朝刊。
前日広島東洋カープが東京ドームで巨人を6-4で下し、7度目のセ・リーグ優勝を決めた記事で埋まっていた。
1面の全面を皮切りに、全40面のうち12面がすべて真っ赤な見出しで覆いつくされ、さらに社説や1面コラム天風録もその話題、他のページにも当然、緒方監督の人となりを紹介する囲み記事などがある。
休刊日の12日をはさんで、13日朝刊も勢いは続く。1面トップは「街の宝物 カープv7」。関連記事は14面にわたり、うち8面は全面を使い、社会面の2面は全面ではないもののほとんどカープ関連で埋まっている。

この間FBのフィード画面も、見事にカープ一色であった。

広島東洋カープは、特定の企業に依存しないという意味で立派な市民球団である。県内自治体からの出資で被爆後わずか5年の1950年に設立された。当初の弱小貧乏球団の経済的な苦境を県民の「樽募金」によって支えたという逸話をはじめ、県民市民の「われらが球団」意識はきわめて高い。まさに「街の宝物」なのである。
カープの優勝は、他球団の優勝とはわけが違うのだ。

だから、25年ぶりのリーグ優勝を報じる地元紙の熱狂振りはよくわかるし、その目出度さに水をさす気持ちは毛頭ない。
ないものの、はたしてこれでよいのか、という疑問もわかぬではない。

11日の紙面では、開催中のパラリンピック3日目の結果を伝える記事が29面の1/3ほどに追いやられ、前々日に行われた北朝鮮の核実験をフォローする記事は、外交欄の片隅でちょっと触れられているだけである。世界を変えた9.11を巡る記事はどこにもなかった。

県民市民は大いに沸くけれども、メディアがそれを無節操に煽り立てるのはいかがなものか。
暮らしや世界は多様であって、小さなもの大きなもの、愛でるべきもの問題とすべきものが溢れている。それらを冷静に取材・分析し、バランスよく取捨選択して「世界平和の確立、民主国家の建設、地方文化の高揚」(中国新聞社社是)のために報道するという志を示してほしい、と切実に思う。

この間の紙面構成や見出しの絶叫振りは、カープ・ファンにあらずば広島県民にあらずと言わんばかりだ。日露戦争の戦勝時や、真珠湾奇襲の成功時もこうであったか、と思わせるものがあって、慄然としてしまう。
ポピュリズムというのは、いつもメディアが先導するのである。

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