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ポジティブ・スイッチ

もう2年も前のことではあるが、リオ・パラリンピックは見ごたえがあった。
人間の適応能力、障害を乗り越える能力はこんなにすばらしい。

走り幅跳びのT44というクラスで金メダルをとった義足のマルクス・レーム選手の記録は8m21cm。
これは、Wikiの一覧によれば、世界10傑にははいらないものの、1992年に森長正樹選手が記録して以来四半世紀にわたって破られていない日本記録の8m25cmに迫るものである。
ちなみに彼の自己最高記録は8m40cmだそうで、リオ五輪の男子走り幅跳びで金メダルをとったヘンダーソン選手の記録8m38cmを上回るという、驚異的なものだ。

水泳にも見るものがあった。両足のない選手が、体全体を使ってまるで魚のように力強く泳ぐ。泳ぎのあまり得意でないわたしなどは足元にも及ばないスピードと美しさ。

卓球もすごい。
両腕のないエジプトの卓球選手、イブラヒム・ハマト選手43歳は、卓球シングルスのクラス6に出場。残念ながら1次リーグ敗退したものの、口でラケットを咥えて玉を足で上げてからサーブを打つ姿を見ていると、目が釘付けになってしまう。

リオ・パラリンピック閉会式の引継ぎパフォーマンスのテーマは、「ポジティブ・スイッチ」だった。
それぞれの人生で、ポジティブ・スイッチを押した後の精進の成果が、わたしたちの背中を押す。

アメリカ・メジャーリーグの隻腕投手ジム・アボットが障害のある子どもたちに語った言葉-----
「忘れちゃいけないこと……ボクたちの障害は、あくまでも他の人の目から見ての障害ということ」
逆にいえば、わたしたちは健常者などと思っているけれども、実はみんな障害者なのではないか。単に障害が目に見えないだけなのだ、ということに気づかせてくれる。

たとえば消化器や呼吸器に問題を抱えているかもしれないし、そうでなくても、社会への適応能力や、嘘をつかない勇気などが少し欠けているような場合もある。人の気持ちへの洞察力が足りないなどというのも、これも大きな障害といえる。

・・・と挙げながら、これはわたしもポジティブ・スイッチをいれなければ、と思う。

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