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タタキの記録

タタキとは三和土と書く、土と石灰と苦汁(ニガリ)を混ぜて叩いて仕上げるから、というところまでは聞きかじっていた。
和風建物の土間の床などはタタキでできていて、つやつやしていて美しい、それに床そのものが呼吸をするので室内の気候調節にもよい、というようなことも聞いていた。
だから、やってみようと思い立ったのであるが、どう調べても誰に聞いてもそれ以上詳しい知識が得られない。どんな土がよいかとか、3つの配合はどうするのかとか、水は使わないのかとか、どうやって叩くのかとか、一切合財のノウハウがわからないまま、無謀にもとにかくやってみることにした。

とにかく暗中模索で、経験もないのに叩いてみたのであるから、以下は「タタキの作り方」といったものではない。あくまで、わたしはこうやりましたという記録である。
ただし、できるだけ伝統的なタタキを頭に描いて労力を惜しむことをしなかったので、これがわたしのタタキです、と胸を張って言うことはできる。

資材の調達

まずは、資材の調達。土に多少砂を混ぜたほうが味が出るのではないか、と川原に行って砂を採る。
働いているのは、東京からやってきた若者たち。土嚢に総計40袋ほど採取。お世話になりました。
砂は目の細かいものよりも、少し小さな砂利の混じっているくらいの荒い砂のほうがよい、草や犬の糞などが混じっていると最高・・・・ではないかと思って、そうした。確信があったわけではないが、それはそれなりの個性となっていると思う。

次に土を採る。家の裏の一段高い畑を2mほど掘って、底の粘土状の土を採った。
別に粘土でなくてもよかったかもしれないが、できるだけ近くの土を選べばそれだけ物語になるし、昔の人もそうしたのではないか。
雨に濡れてどろどろになっても困るし、天日で乾いてかさかさになっても困るので、シートをかけて適度に湿気のある状態を保っておくこととした。

石灰は、園芸用の消石灰(20kg袋)をホームセンターで購入。

ニガリは、凍結防止用の塩化カルシウムの不要になったのを一袋もらってきた。

これで三和土の3点セットの調達ができた。

最初の床の状態

最初の床の様子は、こう。
100年近く床の下で眠っていたので、けっこうコチンコチンの土になっている。
まわりのボイドベンチは版築ですでに完成させている。

石を並べる

床に重たいテーブルを据える予定なので、その土台にするためと、靴を脱いだり泥を落としたりする場所をあつらえるため、石を並べることにした。
まず、4隅に平たい石をきちんとレベルをとって据える。この石は軌道の敷石の不用品。ちなみに、1個約60kg。石の下には空練りモルタルを突きこんである。
この石の上には、完成後にテーブルの足が乗る。

4つの平石の間に玉石(これも川から拾ってきたもの)を敷き詰めた。下のほうをモルタルで止めてある。

その延長上に、部屋の入り口方向に玉石を並べる。
手前右にちらっと見えるのは、版築のボイドにつながったロケットストーブの頭。

一応石を敷きおえて、反対側から入り口方向を見たところ。向こうに、ロケットストーブの全体が見える。
真ん中に置いてある格子の枠は、三和土の配合割合を変えて様子をみるために用意したもの。

叩く

いよいよ、3点セットを混ぜる。手で混ぜてもよかったが、ちょうどコンクリートミキサーがあったので、これを使うことにした。
配合割合は、事前に上の格子枠を使って6種類のバリエーションを試してみて決めた。
わたしの場合は容積で、粘土2、砂1、石灰1、塩カル0.05とした。ポリバケツで量っていれる。

この配合は、土の状態によってかなり異なるはずだということがよくわかる。配合割合についての事前の知識が得られなかったわけだ。

塩カルは、粒状だったので少量の水で溶いて混ぜた。
それ以外に水は使わない。粘土の中に含まれている水分だけで、ちょうど快適に叩くことができた。

よく、水を混ぜて全体をどろどろにして、コンクリートミキサーではなくモルタルミキサーで混ぜて、床の上に「流し」て最後に申し訳のように左官鏝でパンパンたたいていたりするのを見るが、これだと手間は大幅に省けるものの、まるで土間コンのような仕上がりになって、タタキ特有の味がでない。

石の間の目地を三和土で埋めて(指で押し込んで木切をあててハンマーでたたく)、土の上に水抜きのための砕石を厚さ3~4cm敷いたところ。
石の表面を汚した目地の土は、生乾きのとき(3~4日以内ならいつでも)にブラシでこすったり、スポンジで拭いたりすればきれいに取れる。石灰入りの土は硬く乾くのが遅いので、このあたりは気楽である。

まぜた三和土を、砕石の上に置く。左はたたき終わった状態。右はこれからたたくところ。

右をたたきおわると、こういう感じになる。カサにして、1/4から1/5くらいに圧縮される。ぐいぐい圧密されていくのが意外と快感だが、大変根気のいる作業である。

叩くには、写真中央にあるようなハンマー(ゴム頭のでかいのが都合よい)、木槌、板切などを総動員させた。
こういうちまちました床をたたくには、職人さんが使うような正統叩き棒などは逆に不便である。写真左に見えるような、レンガを少し厚くしたサイズの堅木の切れ端があると、それを手にもって叩くのが一番効率がよい。

周囲ができてみると内側が無意味に広くて表情がないので、ここにも石を据えることにした。ここに天端をそろえた石があると、三和土の平面を出すのが簡単になる。ただし、この石はテーブルが座ると見えなくなる。

出来上がり

できあがった。
三和土を混ぜて叩くのに、1日2~3時間の作業でやっと50cm四方というところ。下ごしらえから全体を仕上げるのに3ヶ月を要した。

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