のあるまちづくり
呉市の住宅マスタープランの策定にあたって、斜面市街地の整備対策をテクニカルレポートの形で提案(1996年)。
呉市では旧市内居住者の7割が地形傾斜度3°以上の斜面に住んでおり、その住環境対策は重要な課題となっている。
提案にあたっては、
(1)モビリティの向上
(2)防災性の向上
(3)住宅水準の向上
(4)生きがい創出の支援
の4つの目標を設定し、それぞれに対応した施策メニューを列挙している。
これらの施策の実施には、ソフト対応から面的整備までいくつかのシナリオが想定されるが、面的整備に拘ることなく、地区の実状と住民ニーズをふまえて適切なシナリオを選択するところから現実的な整備を進めるべきである、と結論づけた。
広島市安佐北区に広島市が計画していた工業団地の事業化にあたって1996年に作成した基本計画。
極めて起伏量の大きな山林約100haで、通常の宅地造成では膨大なコストがかかること、すでに工場用地の需要は低迷しており事業化のリスクが高いこと、など土地の買収がほぼ完了している中で悪条件が重なっていた。
そこで、段階的な造成工事と土地の販売、自然地形を生かした宅盤の設定などにより、有効宅地を減らしつつそれ以上に造成コストを切り下げ、特徴のあるまちづくりを行うことを提案。
(その後、経済情勢により事業化は断念された)
---- STEP:段階的な開発・土地処分 -------
●土地のニーズに応じて、ステップバイステップで施工、処分が可能なような造成計画とする。この方針を採用すると、結果的に土地単価を下げることができる。
-1.小さな造成単位で完結した土量バランス
-2.段階的整備に対応した道路網
-3.多様な区画特性と開発順位についてのフレキシビリティ
---- STATUS:親しみのある土地柄づくり --
●土地の販売に先行して「誰も知らない辺鄙な場所」から、「よく行く場所」あるいはよく行かないまでも「よく聞く場所、一度行ってみたい場所」に格上げする。
-1.話題性のある都市的機能などの先行的誘致によるチャームポイントづくり
-2.印象的な玄関口
---- SUSTAIN:複合的なまちづくり -------
●単なる工場や事業所の立地だけでなく、ある程度の都市機能施設の複合と相互の自立とをめざす。
-1.研究・研修施設や住宅など立地可能な土地利用計画
-2.ゲストハウス、従業員レストラン、購買施設などの共用施設の設置
-3.既存の地形、植生を利用した緑の構造化
O市のM地区の開発提案(1996年)。
当時、港湾埋立に関連して丘陵地の宅地造成が市の事業で検討されていたが、M地区はその背後の谷にあたる。
3つの事業をあわせた総合的な開発構想として、提案を行った。
地区の環境を生かす観点から「棚田型森つき住宅地」をポイントとした提案になっている。
住宅地の供給方針を検討するために、O市をとりまく宅地供給の実態を分析し、本地区での供給量とその速度、付加価値付けの方向性についても整理した。
基本的には、立地や市場条件からできるだけ低廉でかつ特色のある宅地づくりを提案したが、前面で予定されていた丘陵地の宅地造成事業が高コストのために処分前に頓挫したためもあって、この構想は実現していない。
呉市阿賀北地区をケーススタディ対象に、広島県が実施した「スロープルネッサンス調査」(1987年)。
本地区は、国道185号休山トンネルの事業化を控えて、「阿賀地区整備基本構想」で移転用住宅地の候補に想定されていた地区である。
斜面地における住環境整備のありかたにあわせて、呉市の重要な課題である急傾斜斜面の防災対策について検討し、新たな住環境形成と一体となった斜面の安定化について総合的な提案を行った。
この成果は、後の「斜面市街地の総合整備に関する検討調査」(1989年)や、「呉市斜面市街地整備方針」(1996年)に引き継がれている。
広島市近郊の丘陵地の開発計画。
比較的比高が高く急峻な丘陵地山林約80haを、土地区画整理事業によって開発するための計画案である。すでに開発許可は得ていたものの、10数年経過していた計画の見直しを提案した。
模型により緻密な検討を行い、小規模分散型法面を用いて土工量を少なくするとともに、段階的な開発が可能なように工区ごとの土量バランスを確保した。この結果、当初260億円を見込んでいた総事業費を、換地率を従前の計画と同じ水準に維持しつつ、4割弱の100億円に圧縮することができた。
事業費の減少は、宅地単価の引き下げを通して、宅地規模の拡大による住環境水準の向上につながっている。
できるだけ自然地形を利用した宅盤をつくりだしたために、大規模な事業所用地、中低層集合住宅、通常の戸建住宅、自然地型住宅など、多様な土地利用を導入することができた。これは、より付加価値の高いまちづくりに向けて、販売企画の自由度を高めることにも貢献している。
現在、この案を基本として事業化を検討中。