しいまちづくり
1990年、広島市作成。
「この手引き書は、広島市内の道路における全体的な景観水準を向上させるため、道路整備にあたって景観上留意すべき事項をまとめたもの」。
1994年のアジア競技大会の開催に向けてさまざまなプロジェクトが進行する中で、都市空間の根幹をなす道路景観についてのガイドラインとした。
現地踏査を踏まえて「10の道しるべ」を示し、合計70項目の配慮事項と、色彩、境界、植栽に関する標準デザインを整理している。
調査及びとりまとめを担当。
市内での身近な事例をふんだんに収集し、境界部分における配慮の必要性をわかりやすく訴えたもので、その精神だけでなく、個々の指摘事項も含めて、現在も充分通用する。
環境デザインにおける、「地」と「境界」の重要性を身にしみて感じる機会をもてたが、逆にいえば、それらが忘れられた情けない景観が街中に充満している、という実態を思い知らされる経験でもあった。
1993年、尾道市が景観形成指導要綱の制定にあわせて「尾道市景観形成の手引き」を発表。
土地利用別の指針、要素別の22の指針とその解説を、共通ガイドラインとして示したほか、「景観形成重点推進地区」を設定して、とくに尾道水道に面した地区の景観の特徴である眺望景観の保全・創造を図るための指針を掲げている。
手引きのもととなった「尾道市景観形成基本計画」及び「尾道市重点地区景観形成基本計画」の調査・とりまとめと、手引き案の作成を担当。
景観は、モラルないしはスキルと、構造に対する社会的意思の問題である。
ガイドラインは、モラルとスキルについて一定の示唆を与えるが、逆に妥協的な達成水準を明示してしまうことで、どこか後ろ向きの感がある。よい景観をつくってやろう、という意欲を、つくる人たちが持てれば、ガイドラインはむしろ邪魔である。モラルとスキルを高めるためには、それぞれのやる気を起こさせるための仕組みこそが必要ではないか、とつくづく感じた。
その観点から言うと、もっとも重要なことは、現在の景観がすっかりアノニマスになってしまっている、という点である。あの建物は誰がつくった、あの橋は誰がつくった、ということを誰もが知っている、というような世の中であれば、つくる人はもっとやる気を発揮できるだろう。
地域の景観構造に対する社会的意思を整理して、きちんと示すことは、まさしく行政の責任である。景観形成指導要綱には、それがなくてはいけない。尾道のような都市では、大切な景観要素や視線、視点場についての共通の理解を得やすいから、それは容易なはずである。そうは言っても難しいのは、あるべき構造を実現するためのツールがないこと、そもそもあるべき構造を説明するための理屈が希薄なためである。それで、いきおい及び腰になってしまうのが現状だ。
広島県建築士事務所協会ひろしま建築文化賞(2003年~)、倉敷市建築文化賞(1993年~97年)など、建築景観、都市景観に関する表彰制度の審査委員を務めた。
呉市美しい街づくり賞(1996年~)では、賞の創設以来選考委員会会長を務めている。
また、 A-cityヒルズ&タワーズの計画ではメンバーのひとりとして平成7年度ひろしま街づくりデザイン大賞を、カフェテラス倶楽部の活動でも「公共空間活用への一連の取組」のタイトルで都市環境デザイン会議平成12年度JUDI賞を受賞している。
(1)その建物や活動などによって街並みが豊かになったか
(2)その建物や活動などの目指すコンセプトが先導的なものであるか
(3)市民の利用する空間として具体的に新たな魅力を生み出したか
(4)周りの人の意欲を高め美しい街づくりに向けた運動の広がりや波及効果が期待できるか